世界の三大伝統医学のひとつである中国医学は、まさに「気の医学」と呼ぶこともできる。気の意味する領域は広大で、現象界の一切は気からなり、気のはたらきに帰するのであるが、医学の世界で対象にされている気はもっぱら生命エネルギーとしての気にほかならない。 生体は先天の気を保有し、飲食物や呼吸から得られる後天の気を獲得することにより、その生命が維持されている。気は血管系や循環系とは異質の「経絡」というルートに従って体内を常に隅なく循環するとされた。経絡の走行する皮膚上の反応点が「経穴」、いわゆるツボである。健康人は体内の生気(血気・精気)がバランスを保っているが、このバランスに狂いが生じると病に陥る。 病を体内の気のアンバランスと見なすのであれば、治療はそのバランス回復にほかならない。生気の状態は陰陽五行論を駆使して捉えられ、異常を調整するために針や灸などの物理的な刺激や、さまざまに組み合わせた薬物の服用が考案された。 中国の最古の体系的な医書「皇帝内経」には「百病はみな気より生ずる」とある。いわゆる「病は気から」という俗言の気は、おおよそ気持・気分といった心のあり方を指しているが、それを精神状態を含めてより広義に捉えれば、まさに中国伝統医学の本質を言い当てたものにはかならない。(「気と人間科学」雑誌より)
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